東北支部例会

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第200回日本消化器病学会東北支部例会
パネルディスカッション「女性消化器医師のキャリア形成と課題」からの報告
福島県立医科大学消化器・リウマチ膠原病内科学講座 片倉響子
弘前大学大学院消化器血液内科学講座 櫻庭裕丈

現在、新卒医師の約30%は女性医師ですが、消化器病学を専門とする医師において女性医師は約10%とはるかに少ないのが実情です。

2013年の日本消化器病学会支部長会議では、男女共同参画の理念のもと女性の支部評議員を増員するよう各支部に要望が出され、また厳しい医療環境のなかでキャリアの向上を図り、その能力を発揮できるようにするための情報交換、発信の場として各支部に「女性医師の会」を設立することが決まりました。

このような背景のもと今回の支部例会では足がかりとして、女性消化器医師をテーマにパネルディスカッションを行いました。

各地域、各分野で仕事を続けられている8名の女性医師が、自身の経験をもとに女性医師のキャリア形成について考えを発表しました。

福島の横川先生は出産前までに計画的にキャリア形成することの重要性を発表されました。

同じく福島の坂本先生は育児休業中に基礎講座へ移り研究や学生指導を続けており、家族や職場の理解と協力が不可欠とのことでした。

福島労災病院の田井先生は、環境の変化により勤務形態を変えざるを得なくとも、細く長く継続することで消化器医師としての実力のみならず、指導的立場として経験が得られキャリア形成に役立つとの発表でした。

岩手の小野寺先生からは、医師不足の深刻な東北地方だからこそ、常勤が困難となった女性医師でもパートタイムで外来検査や診察をこなすことで強力な戦力となりうるため、柔軟な勤務形態の促進や都市部からの代替医師の派遣など環境整備も必要との訴えがありました。

福島の木暮先生は医師歴28年のベテラン先生ですが、女性医師としてハンディを感じたことはない一方で、出産・育児休暇後の復帰を容易にするには若いうちに知識や技術を十分に身につけ、また家庭、職場、近所、学校など周囲の理解を得られるよう努力し環境を整えることが重要とのことでした。

弘前の諸橋先生は消化管外科から病理医へと転身された経験をふまえ、地道に仕事を続ける女性医師は安定した労働力の供給源となる可能性を秘めているとの発表でした。

秋田の草野先生は、医師のキャリア形成における男女差の意識に関するアンケート調査を行い、女性医師自身が男性に比べキャリア形成できていないと感じ、育児との両立といった外的要因以外に使命感・責任感不足やロールモデル不足といった内的要因があり、またとくに未婚女性医師の理解や協力が得られていないといった状況が明らかとなりました。

山形の中村先生は地域包括システムの構成要素である「自助・互助・共助・公助」にあてはめて、キャリア形成には自分の努力、家族の理解と協力、職場の理解と環境整備が必要であるとまとめていただきました。

最後に東北大の下瀬川教授から「学会としてどのような協力ができるか知りたい」という要望がございましたが、逆に女性医師が支援をしてもらうという考えのみではなく、これまで支援していただいたかわりにどのように東北地方の消化器病分野に貢献できるかを検討していくことが重要なのではないかと思います。

今後設立が検討されている支部女性医師の会は、単に女性医師のみの会ではなく、すべての消化器医が積極的に参加し、女性医師の置かれた諸問題を理解し、互いに社会に貢献できるよう支援していくための会となるよう願っております。